俺が大人になった冬
俺はハッと我に返り、急いでベランダに出た。下を覗き込んでみると、ちょうど彼女がマンションから出てきたところだった。

「おい!」

大きく息を吸い込み、俺は大声で彼女を呼び止めた。

その声に気付き、彼女が俺の方を見上げる。少し彼女の目元が光っているように見え余計切なくなり、言いたいことが上手くまとまらず……

「またな!」

俺はその一言に、俺の全ての気持ちを込めた。

サヨナラではない。

俺たちはこれで終わりではない。

俺たちは、またいつかきっと会える。と。

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