俺が大人になった冬
「マジ! 肉じゃが超好き!」

俺にとっての彼女の存在も、自分でもうまく説明できなかった。

家に彼女が来るようになって、一緒にメシを作ったり、2人で部屋にいるだけでなんとなく楽しい。

時々ふっと、彼女に触れたいと思うときもある。でもそれは、エリナを抱くときのような性欲剥き出しのようなものではなく、彼女の手に触れたり、髪を撫でたり、抱きついて彼女の体温や、感触を感じる……それだけでいい。

俺にとって彼女はきっと、小さいころどこに行くにも引きずっていた『お気に入りのタオル』みたいなもので、傍にあるだけで安心できる存在なのかもしれない。

「よかった! じゃあ、ジャガイモの皮、剥いてみましょうか」

一人暮らし用のワンルームマンションのキッチンは、キッチンなんて呼べるようなものではない。熱源は電気コンロが一つだけだしスペース自体が小さいから、2人で料理をするとなると、密着せざるを得ない状態だ。

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