俺が大人になった冬
「こんにちは」
メッセージの通り、彼女はいつもの時間に俺の部屋に来た。
「電話ありがとう……あ、上がりなよ」
朝から妙にハイテンションだった俺は、乱雑になっていた部屋を張り切って片付け、前日買い込んできた材料でカレーを作ったりして、彼女が来るのを首を長くして待っていた。
しかし、部屋に訪れた彼女の顔にいつものような笑顔はなく、このあいだのことを気にしてか、少し警戒しているようだった。
「今日はさ、昼飯にと思ってカレー作ってみた! 結構上手くできたんだ!」
彼女を部屋に通しながら、必要以上に明るい声で彼女に話しかける。
「うん……」
俺の言葉にますます曇っていく彼女の顔を見て、胸がギュッと苦しくなるような感覚が襲った。
「……このあいだのこと…怒ってんの?」
怖々と彼女の顔を覗き込み尋ねる。
「違うわ」
「じゃあ、なに?」
「今日は……元くんに謝りに来たの」
「謝る?」
「ええ」
彼女はそう言ったまま、涙ぐんで俯いてしまった。