俺が大人になった冬
「え? なに?」

「ハート? なにそれ? 知らねぇ」

分かっていて買ったと思われたくなくて、わざとシラを切る。

「ほら見て! 見て!」

彼女はもの凄い発見をしたように目を輝かせて、机の上で二つを並べてハート型を作り「ねっ!」と、とても無邪気に笑う。

その笑顔がとてもかわいくて。

かわいくて……

「ホントじゃん」

言いながら俺もニッコリ笑ってみせる。

彼女が愛おしい。

涙が出そうなくらいに。

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