短編・ショートショートなど。
私が通されたのは、お世辞にも綺麗とは言い難い小さなビルの一室だった。

部屋の中央にはテーブルと小さなソファーが、向かい合うように設置されている。

背後には狭い室内にどうやって入れたのか、大きな書棚が窮屈そうに置いてあり、ファイルや書類などが整然と並ぶように収まっていた。

ビルの外観とは違って中は見渡す限り、清掃が行き届いているようだった。

この部屋の主は、余程の綺麗好きなのだろうか。

「では貴女の家に、妹さんの霊が出ると?」

私の向かいに座っている主が、掛けている黒縁眼鏡のブリッジ部分を中指で押し上げながら訊いてきた。

糊の利いた白衣を着ており、何処かの新人研究員にしか見えない。

外見だけで判断するならば、まだ20代前半くらいだ。

若干神経質な印象の、所長と呼ぶにはまだ若すぎる男である。
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