† 黒猫とクラウン †
† 与えられた「名」 †
「おはよう」

『・・・フン』

セスラが家に来て、もう1週間になる。

いい加減慣れてきた。

「じゃ、行って来ます」

いつものように、そう言って玄関を出るはずだった。

が、しかし。

『ちょっと待て』

セスラにこうやって呼び止められたのは初めてだった。

「・・・なに?早く行かないと、学校に遅れちゃうよ」

今日は日直。

遅れるわけにはいかない。

『おぬし、帰ってきたら少し時間をもらえぬか?』

・・・今日は帰ってからは特別用事もないし・・・。

セスラに何か頼まれるのも初めてだと思う・・・。

「いいよ。じゃ、行ってきます」

何だろう?

と思いながら、学校へ向かった。

【通学路にて】

「よっ!千影!」

毎朝背中をどつかれながら言われるその挨拶が、僕はたまらなく好きだった。

「あは、蓮。おはよう」

だから、微笑みながらいつもそう返す。




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