色、色々[短編集]
社会人になったって関係は同じ。

一緒に居る時間は否応なしに減ってしまった。だけどこまめに連絡を取り合っていたし、自分の恋人についての相談だって、明里にしてきた。


「会社の女の子に告白された」


そう言ったときに明里は目をまん丸くしたのを覚えている。
驚いたんだと思っていたけれど、今思えば少し違うのかも知れない。


「――まじで!?」

「まじで。びびった……会社の喫煙所で急に……」

「彬意外とモテルよねー高校の時も告白されたとか言ってたよね?」


意外となんて。
けらけら笑う明里に苦笑しながらお酒を飲んだ。


「で、何て返したの?」

「好きな人がいるから、ごめんって。あいつがいるし、あいつのことが好きだし」


それは至極当然で。
自分に、5年一緒に居る恋人以上に大事な人が出来るとは思わない。それは今でも変わらない。

明里とはまた別格の特別な人だ。

その言葉に、明里は少し悲しそうな淋しそうな顔をして「そうかーだよねえ」と返すだけで、話はそれで終わった。

気付いていたのかも知れない。
気付かないふりをしていたのかも知れない。

今思えば全て納得がいくのに。
多分知らず知らず、見ないようにしていたのかも知れないと思うんだ。


明里の自分に対する感情に。
今まで何度かあった告白。


それに何かしら感じていた自分が明里に対してのみ気付いていなかったなんて自分でも信じられないのだから。
――明里とは親友で
このまま共に一緒にいれるものだと思っていた。


互いに結婚しても遊ぼうねと話合ったのはつい先日だ。

セックスの話だってしたこともあるし、片思い中の相談だって。結婚願望の話も子供が欲しい話だってした。

二人で旅行も行った。
大きな胸がコンプレックスだと言う明里に、ケラケラと笑った。
綺麗な形の胸を、素直に素敵だと思った。

目覚めて窓から見える雪景色を、明里のようだと思った。

すぐさま消えてなくなってしまう雪に、まぶしくてまぶしくて大切にしたいと想う気持ち。


大切に大切にしないと、溶けてなくなってしまう様な。
それを桜と一緒だと心のどこかで呟いた。



どんなに大切にしたって、咲いた物はいつしか枯れる。
積もった雪はいつしか消える。
終わりがあることを知っている。

だから明里を、傷つけないように、だけど傍で有り続けて欲しくて。


壊さないようにし続けて、きっと壊し続けていたんだ。
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