きみに守られて
プロローグ

桜の咲く季節に一人の少女が転校してきた。

クラスメートで机が隣同士だった男の子は
窓際で外の桜を見つめている少女の後姿を
見ながら言った。

「髪の毛綺麗だね。一本だけ貰っていい?」

唐突だった。むちゃくちゃな言葉だった。
少女は振向き一瞬不思議そうな顔をし
「いいよ」と
頭を男の子のほうに向けた。
一本の髪の毛をつかみ男の子はすぐに離した
「痛そうだからやっぱりいらない・・・」
「いいよあげるよ!」

少女は自分で髪の毛を一本をつかんで
男の子に引っ張らせた。

痛そうな顔は微塵も見せなかった。
少女はクラスでイジメられたていた男の子に
優しかった。
男の子は初めて人から女性から
優しくされた。
だけど少女は三ヶ月ほどで
またどこかに転校して行った。
男の子は再びイジメ差別、
虐待の日々に戻り、独りになった。

苦痛に耐えて生きるために
楽しい記憶を心が消した。
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