黒王子と銀の姫
「イリア、お前はどう思う?」

扉の位置から動こうとしない弟に、キリシュは視線を投げかけた。

「父上がご存命なうちは、波風を立てないほうが賢明かと思います」

「そうか、では、お前の意見を尊重しよう」

今年二十九歳になる美貌の青年は、流れる金の髪を優雅にひと揺らしし、弟に手を差し伸べた。

新緑を思わせる緑の瞳
その瞳に隠し切れない情欲が浮かぶ。

イリアはこみあげてくる不快さをやりすごし、冷ややかな無表情を保ったまま、ゆっくりと前に踏み出した。




< 77 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop