幾千の夜を越え
思い付きで切り出した様でいて、的を得たその言葉に頭を殴られた衝撃を覚える。

「毒物を井戸へ投入したのか?」

だとすれば水を含んだ者全員症状が出るはずなんだが。

「井戸へ毒物を混入するだけなら村人が寝静まる深夜に忍び込めば良さそうなものを見られる危険を犯してまで何を確認したかったんだろうな?」

何気無いその疑問に
考えを巡らせる。

何故…何の目的に?

改めて村を見渡してみる。
苦しむ老人と子供が映り込む。
感染する人間を見る為…?

無差別に見えて実際は感染者は
限定されているのか?

「年寄と乳幼児を限定として感染する毒なんて本当にあるのか?」

それに僅かでは在るが中間世代にも感染者は出てはいる。

「免疫力の弱った老人に病人や…元々弱い子供を狙った犯行か?」

「免疫力?…日和見感染…」

何処の村にも老人や子供が居るがより確実にする為の来村だった。

「日和見感染か…。
そういや、野草の中には現代では抗生物質として使われている物も数多くあるな」

右近は知っていたのか?
だから、村に下りられた。

自分が感染する可能性があるなら無暗に村へ出向かないだろう。

最初から確証があったんだ。

< 105 / 158 >

この作品をシェア

pagetop