幾千の夜を越え
10th結末
「ぅわ〜」

それが今の俺のモノなのか
右近の絶叫だったのか…。

燃え盛る社…。

ポツポツと降り始め雨足を強める雨模様とは明らかに異なる。

雷鳴轟く豪雨が一気に降り注がれあらゆる物を薙ぎ倒していく。

その勢力の差は歴然で社のが鎮火したのは一瞬だった。

燃えて脆くなった柱が崩れ落ちるのもまた瞬間で…。

尊の躯が水泡に包まれゆっくりと着地する。

「尊…」

その姿を認め抱きすくめた。

「尊…」

尚も降り続く豪雨に落雷が村人の民家ごと叩き潰し焼き払った。

煤汚れてはいても穏やかな顔から村人に火を放たれる前に事切れたことを伝えていた。

川は反乱し土砂崩れで残る民家を流し沈めている。

「尊!」

何故だ!
何故いつも我を引き裂こうとする父神は我を如何に致したいのか?

我に身を避けと申されるのか?
我を生かすおつもりはないのか?

太蔵丸さえも流され
社も跡形もなく消え
尊を抱く右近だけが残る。

「もう止めろ…止めてくれ…」

止めどなく流れ落ちる涙を拭きもせずに右近と共に心の悲鳴を上げ

「父神よ!我は尊と共に眠る!」

天に向かい叫んだ。

「我を起こしてくれますな!」

< 136 / 158 >

この作品をシェア

pagetop