幾千の夜を越え
3rd 対面
昔から俺には、
葵の危機には必ず
立ち会うという…
奇特な体質がある。

俺が危険に晒すのか?
と、真剣に悩んじまう程に…。

葵の額に俺のそれを当て、
含み笑う。

「…何だ。
それって俺の事じゃん」

締まりのねぇ面を見せられねぇで

「葵も解ってたんじゃねぇか…」

そのままで言った。

首を掴まれ、
唯一動く目を、
上に向けて…

必死で表情を読み取ろうとする。

「慎ちゃん?」

葵に情けねぇ程に緩み切った顔を見せられるはずもなく…。

「仕方ねぇな…」

如何にもダルそうに、

「葵を、俺の女にしてやるよ…」

捨て台詞の様に告げた。

「えっ?私が慎ちゃんの彼女に…なるの?」

間の抜けた返事に、

一気に顔が引き攣る。

「何?俺の女は不服なのか?」

眉を潜め正視した。

「違うよ、あのね…。
慎ちゃんと違って私は慎ちゃんが初めてなの…。
彼女になると…今までとは何が、変わるのかも解らないから…」

嗚呼、
俺は卑怯な男だったと思い知る。

出来れば、
気付かず過ぎたかったんだが…。

「幼馴染みには戻る気はねぇよ」

葵に残した選択肢は、
二つだけだ。

幼馴染みを卒業し、
このまま別れるか…。

彼女となり、
絶えず近くに居るか…。

「彼女になれば傍に居てくれる?いつも一緒に居られるの?」

それしか選べねぇことを…
解ってたんだ。

「嗚呼、約束する。
二度と離れたりしねぇ…。
ずっと葵の傍に居てやるよ」

俺の腕に堕ちた天使の唇に、
さっきの返事の変わりに、

キスを落とす。

軽く触れただけのそれから、
電流が身体中を駆け廻る。

初めて心底惚れた女と
交わした口付けだからなのか…?

突然の出来事に、
呆然と目を丸くして固まる葵に。

「今度からこれもあるってこと」

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