偏愛ワルツ





どいつもコイツもと思っていた。

どいつもコイツも、俺が睨むと怯む。男も女も関係ない。ダチでさえも、俺が睨めば……いや、目を向けただけで押し黙る。

俺はそれが我慢ならなかった。

言いたいことがあるなら、はっきり言えばいいのだ。

お前らはテレパシーでも使えるつもりか。

人間関係が、腹立たしかった。

だから俺はグループを抜けたし、廊下を歩くのもひとりでだ。

「待ちなさい」

と階段を下りていた時、踊り場で呼び止められた。

声で判断せずとも、相手がわかる。この学校で俺を呼び止められるヤツはひとりきりだ。

振り返ると案の定、うちの担任がいた。まだまだ新任らしく、しわもない黒のスーツがイカしていた。

「ンだよ」

少し見上げれば、奥が見えるか見えないかの絶妙さで、黒いストッキングに守られる脚が拝めた。

「髪、黒くしてくるって言ったわよね」

「……知るかよ」

嘘だ。本当は覚えているが、わざとやらないのだ。

「こないだ言ったはずでしょ! 金髪は校則違反です! 次までに染めてらっしゃい!!」

「もし染めてこなかったら?」

「っ、もしじゃなくて。染めて来ればいいの!」

ああ、ダメだなと思った。
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