ジュエリーボックスの中のあたし
ん?まって。ゆきが台所?あのゆきが?



ゆきの料理の腕前は嫌というほどご存知だ。



ゆっくりと食卓に近づいたあたしは別の意味で一瞬パニックになった。



「………これ…食べられるのかしら。」



もう一度意識を飛ばしてしまいたい。



テーブルに並べられた料理の数々は一体何から作られたのか検討もつかないほどの変わった食物たち。



創作料理にもほどがある。



食材を尋ねようとしたけど、ゆきは慌ただしくあたしを椅子に座らせるとせかせかと出かける用意をし始めた。



「どこか行くの?」



振り返り尋ねた。



「うん。加奈子とデザインの打ち合わせ。」



「加奈子って黒髪の秘書?」



他にどの加奈子がいようか。わかってはいたけど聞いてしまうのが恋する女心だ



「うん。帰りは夜になるし、ミリは今日出勤でしょ?勝手に夜食はあさっていーよ。」



そう言うか言わないかのうちにゆきは部屋を出ようとした。



「ゆき!」



咄嗟に呼び止めてしまった。



立ち止まったゆきはこちらを振り返り言葉の続きを待っている。



呼び止めてはみたもののその後の言葉は出てこなかった。



心の中の気持ちは上手く言葉として繋がってはくれない。



ホステスとして嘘で固めた誉め言葉には長けていても、本当の気持ちは言葉にならない、出来ない。



それはすごく悲しいことだった。
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