未来のない優しさ

｢彼女って？｣

低い声で目を細める健吾は何故か怒ってるようで、瞬間体を離そうとしてしまうけれど、がっちり
肩を掴まれていてそれもできない。

どうしたの…。

｢彼女ってどの女？｣

｢あ…。たまに健吾と一緒にマンションを出入りしてる人。…何人か見たけど｣

｢見てたわけ？｣

｢う…ん。たまたまだけど腕組んでるの見たし…。どの人が彼女？どの人にしたって面食いだってばれてるよ｣

明るく聞く私の問いは、やけにしらじらしく二人の間に落ちて、健吾は小さく溜息をついた。

｢今は彼女はいない。たまに抱いてた女はいたけどな。その女達も俺の事恋人とはみてなかったしな｣

私の肩から手を離すと、無表情なまま頭を撫でられた。