未来のない優しさ
それでも何も言わずに、
健吾は私を見守ってくれていた。

「…何か、地雷踏んだみたいだな」

ぼそっと呟く健吾の声は、あえて軽く言ってくれているけれど辛そうで。

「ごめん…」

握られた手をそっと抜いて、健吾の首にしがみついた。
ぎゅっと目を閉じて、溢れそうになる涙をぐっとこらえていると、背中をぽんぽん叩いてくれる健吾…。

「…健吾の部屋は…嫌なの。
一緒にいたいけど…あの
部屋では暮らせない」

どんどん小さくなる声を必死に出す私の気持ち。

思い当たる事があるのか、健吾は何も聞かず。

「…わかった。
二人で新しい家探そう」

そして、更に私を抱き寄せると

「愛してるよ…」

耳元に吹き込んでくれた。

私も愛してる。

けれど、今まで健吾との結婚に二の足を踏んでいた理由に気付いてしまったから…愛してる気持ちだけじゃ、あの時の私と今の私は変わっていなくて。

それでも、少しはあの頃より…私は強くなってるのかな…。
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