未来のない優しさ



「覚悟はしてたけど、葵ちゃんと相模さんってすごい人だったんだね」

披露宴の華やかさに圧倒されて、呆然と呟く柚に俺も頷きながら。

金屏風の前のひな壇に並ぶ新郎新婦…相模さんと葵ちゃんを祝う列席者は
300人を超えて、かなりの規模の披露宴。

「私たちは、もうちょっと抑えようね。
お色直しはせめて2回くらいで…」

ふふっと笑う柚は、会社を辞めてから体調も落ち着いて、これ以上綺麗になる事はないだろうと思う俺を日々裏切っている。

胸元の傷を気にせずに着た赤いドレスが似合って、その心も身体も俺の。

一緒に生きる未来は明るい。
柚がいる未来に感謝して…。

丸い六人がけのテーブル。
隣の席に座る柚の体をそっと引き寄せると、ニヤリと笑って唇を重ねた。

味わうように舌で唇をなぞると、びっくりして固まる柚の鼓動が跳ねる音を聞いた気がした。



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