恋するために生まれた
「こうなってしまったら…
 話さないといけないわね」


あたしの前で
ホットミルクが湯気を立てている。

神妙な母とは逆にあたしは
ミルクティーがよかったな、とか
全然違うことを考えていた。


小さな頃からそうだ。
こういう場面では
無意識に違うことを考える。
なるべく、傷つかないように。




「一目見て、すぐわかったわ。
 あの女にソックリだった」

「え…?」



あの…女?

予想外の言葉に
あたしは顔を上げた。



「片桐ナオ。
 死んだツバサ君の母親よ」





意味が、わからなかった。

どうして?
どうしてツバサのお母さんを知ってるの?





――母親じゃねぇし――



ツバサの言葉を思い出す。


けど、
だけど、
ツバサに似た今のお母さんは?





「できることなら…
 話したくなかった」


母はふぅ、とため息をつき
涙声で、言った。



「どうしてあなた達が
 出会ってしまったの…」
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