ジュリエットに愛の花束を。

ライバルの本性



「……」


お兄ちゃん問題、アリサさん問題、松永問題、樹問題。


山積み問題の土砂崩れに埋もれてながらも、電車に乗って大学に向かっている途中。

電車の中で痴漢現場に遭遇した。

現場っていうか……痴漢に。


『せめて見た目だけでも気合い作戦』を続行してたのがまずかったのかもしれない。

ショートパンツを履いた腰のあたりに、不自然にぶつかる気持ちの悪い手。

少し様子を見ていると、その手はだんだんと下に向かって……。


「……」


前回、痴漢に遭った時には、駅に着く直前に捕まえようとして失敗して逃げられた。

駅に着いたと同時に人が流れて、その流れの中で抵抗する痴漢を捕まえておくなんて、かなり高度なテクニックが必要で。

……その時の事は未だに後悔でいっぱいなんだけど。


だからこそ、この痴漢は何が何でも捕まえてやりたい。


……と、そんなあたしの熱意が伝わっちゃったのか、痴漢の手が離れる。

チラっと視線だけで振り向くと、30代に見えるサラリーマンが気まずそうに目を逸らす。


30代……そんな若くして痴漢なんて、人生棒に振っていいのかな。

なんて、考えてから、しまったと気付く。



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