ジュリエットに愛の花束を。

レアうさぎ



「遅かったじゃーん」


遅れて行ったあたしに、皐が言う。


「うん。痴漢捕まえて事情聴取されてたの」

「え、すっごいじゃん!」

「うん、まぁ……。でもさ、一度はあたしのお尻触わっときながら、隣の女子高生にターゲット移したんだよ。

よかったんだけど、失礼じゃない?」


机に教材を出しながら言うと、それを聞いた皐が笑う。

ケタケタと楽しそうな笑い声が、講義中の静かな教室に響いて注目を引く。


「ちょっと、笑いすぎだから」

「だって、……あー、おかしい。それは確かによかったけど、女心としたら微妙だね」


ひとしきり笑った皐は、先生からのきつい眼差しに笑顔で応えると、またあたしを見る。


「でもさ、痴漢に遭ったなんて聞いたら、また椎名先輩怒るんじゃない?

前だって、報告しただけですごかったんでしょ?」

「んー……まぁ」


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