ジュリエットに愛の花束を。


「おまえは、何かあるとすぐ顔に出るから分かるんだよ。

……泣き出しそうな顔するから」

「……だから眠いんだってば」

「何年おまえの兄貴やってると思ってるんだ。おまえの様子がおかしいのなんか、声だけでも分かるんだからな」

「……」

「何があったんだよ。おまえがそんなに落ち込むなんて……椎名か?」

「違う」


それだけはきっぱり否定してから、お兄ちゃんと目を合わせた。


日が落ちてすっかり暗くなった部屋に、お兄ちゃんの真剣な表情が見えた。

あたしを心配してくれてる、お兄ちゃんが。


「もし、何かあったとしても。それはお兄ちゃんには関係ない。

あたしだってもうそこまで子供じゃない。

……いつまでもお兄ちゃんに頼って生きてけるわけじゃないんだから、放っといて」

「……瑞希」

「ほら、トラの親は崖から子供を突き落とすって言うじゃん。あんな感じで……いや、突き落とされるのは嫌だけど。

あたしが一人で歩き出すのを、遠くで眺めてればいいから」






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