ジュリエットに愛の花束を。


お兄ちゃんがうちに帰ってきてる事、お嫁さんの立場だったら絶対に面白くないと思うのに。

里香さんは、そんな気持ちなんかまるで見せない。


肩まで伸ばしたきれいな黒髪が、冷たい風に揺れる。

その髪から覗いたピアス。


それを見つめていると、里香さんが不思議そうに首を傾げた。


「どうかした? 林檎嫌い?」

「あ、いえ。……そのピアス、去年お兄ちゃんが?」

「ああ、そう」


ピアスに触りながらクスクス笑い始めた里香さんが、あたしを見る。


「達也から……、あ、お兄さんから聞いた時、笑っちゃった。

瑞希ちゃんに頭下げて一緒にジュエリー店に入ったのに、一切アドバイスしてもらえなかったって。

ちょっと怒りながら言ってたよ」


去年のクリスマス直前。

お兄ちゃんに頼まれてジュエリー店に入った。


里香さんのプレゼントを選びたいけど、あまりに種類があってどれがいいのか分からないって言われて。







< 173 / 355 >

この作品をシェア

pagetop