ジュリエットに愛の花束を。

理由



朝風呂で凍えそうになったあたしを、お兄ちゃんの作った温かいお味噌汁が待っててくれた。

昔から好きなしじみのお味噌汁。

隣に並ぶのは、だし巻き卵とサンマの開き。

すりおろした大根つき。


「朝からよくやるね。夕飯でもいけるメニューだよ、これ」


向かいに座るお兄ちゃんに苦笑いしながら言うと、お兄ちゃんは爽やかな笑顔を返す。


「まぁな」


あたしだったら、朝からグリルとか洗いたくないから、毎回パンにしちゃうけどな。

しかもセルフな感じで。

で、片付けももちろんセルフ。

もしくは、樹に頼む。


樹って名前を頭の中で出した途端、放課後会える事を思い出して……。

思わずにやけそうになった顔を、慌てて引き締める。


バレてないなかなーって心配になってお兄ちゃんをチラっと見ると、お兄ちゃんは黙々と箸を進めていて。


そして、ぴたっとそれを止めるとあたしを見た。







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