ジュリエットに愛の花束を。


あのお兄ちゃんが?

樹を毛嫌いしてるお兄ちゃんが、樹の侵入をいいって?


信じられなくて聞くと、樹は軽く笑って答える。


「ああ。熱が38度以上あるって話して、誰もいない家に一人にするのも心配だからって相談したら、いいって」

「……へぇ、あのお兄ちゃんが」

「って事だから、お兄さんが帰ってきたら交代するよ」


樹が優しく微笑むから、なんだか恥ずかしくなって目を逸らす。


考えてみれば、別れ話云々をした時から、こんな風にきちんと話すのって初めてだし。

……っていうか、別れ話をしたのって昨日なんだっけ。


たった1日別れてただけなのにすごく懐かしく感じる樹に、口を尖らせた。


「別にただの風邪だし、看病する必要なんかないのに」


可愛げない事を言ったのに、樹はなんでだかあたしを見て嬉しそうに微笑んでいるだけだった。




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