ジュリエットに愛の花束を。

意地っ張りな涙



「あのタイミングで……おまえを一人、この家に残した事を、ずっと後悔してた」

「なんで……?」

「……」


思いつめたような声で話すお兄ちゃんに聞いても返事はなくて。

だけど、その理由も分からなくてただ呆然としていた時。

樹がお兄ちゃんに聞いた。


「お兄さんは……瑞希の気持ちに気付いてたんですか?」

「え……」


あたしの気持ちに……?

って、あたしがお兄ちゃんを好きだった事……っ?!


まさか……、そんな気持ちでお兄ちゃんに視線を移す。

お兄ちゃんは目を伏せたまま、ただ一点を見つめていた。

つらそうに歪めた表情はそのままで。


「……っ」


その表情に、あたしはお兄ちゃんの答えを確信する。


「お兄ちゃん……」

「……知ってたよ。瑞希の気持ちは。……俺の事、好きでいてくれたのは、知ってた。

だから……あんなタイミングで、あんな形で、瑞希の気持ちをないがしろにして傷つけた事を、ずっと後悔してたんだ」




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