ジュリエットに愛の花束を。


……とは言っても。


「瑞希、今日はすき焼きするからなー。学校終わったらすぐに帰って来い。

間違っても椎名の家なんか寄り道してくんなよ。

あと、くれぐれも知らない人からお菓子をもらったり……」


朝一でこれだけ言ってくるお兄ちゃんは……正直うっとうしい。

昨日の今日で、こんなに早く意見を撤回するハメになるなんて思わなかったし。


「だから、松永は……まぁ、いいや。はいはい」


言い返すのも面倒になって家を出る。


秋の空は高くて、見上げる限り透き通った水色をしていた。

ところどころに浮かぶ薄い雲が、わたあめみたいで……。

と、そこまで考えたところで、松永の顔が頭に浮かぶ。

思考回路のどっかで、わたあめとプリンが繋がったらしい。


松永は……本当にあたしに気があるのかな。

でも、あたしと樹は、校内でも有名なカップルだし。

……麻衣ちゃんのおかげで。




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