ジュリエットに愛の花束を。


一瞬、やばい! なんて気持ちが浮かんだけど、よくよく考えれば別に問題なんかないし。

むしろ三本目の予防線が引けていいかも。

樹の存在をアピールするには、もってこいの場面だし。

その前にあたしに用事だかもわかんないし。


そんな事を考えながら門に差し掛かった時、あたしに気付いた松永が声をかけてきた。


「あ、瑞希」

「あ、……松永、おはよー」


いかにも今気付きました。って感じで笑顔を作ると、松永の呼びかけに樹も振り向く。

あたしと樹の視線の先で、松永は少し緊張した笑顔を向けた。


「昨日の電話で言い忘れたんだけどさ」

「……うん」


わざわざ「昨日の電話」とか言わないで欲しい。

友達かも微妙な松永との仲を、樹に万が一誤解されたりしたら色々面倒だし。



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