ジュリエットに愛の花束を。


いつも口ゲンカばっかりしてたお兄ちゃんの、「お兄ちゃんらしい」言葉は、無理矢理押し込めた寂しさを誘い出して……。

涙まで誘おうとする。


「……別に。あたしだってもう大学生だし、周りだって一人暮らししてる子も結構いるし、こんなの普通だよ」


それでも何とか強がって言うと、お兄ちゃんはそんなあたしを見て微笑む。

そして、お鍋のフタを開けて、あたしの取り皿を片手に取った。


「ならいいんだ。

……でも、俺が出て行ったせいで、おまえが椎名の部屋に入り浸りになったのかと思うと……どうもな」


最後はぶつぶつと文句を言いながら、お兄ちゃんは卵を割って、お肉や野菜を入れていく。


「自分でやるよ」

「いいから。俺だっていつまでもいるわけじゃないし。いる時くらいは甘えとけ」

「……」


お兄ちゃんが取ってくれたお肉を食べながら、目の前にいるお兄ちゃんをこっそりと見つめる。

今となってはもう、恋愛感情なんてないけど……だけど、それでも、大切な人である事は変わりない。







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