ジュリエットに愛の花束を。


「どうかな。泣かないんじゃない?」

「へぇ。兄貴が結婚するってなった時は家出までして、俺の部屋でビービー泣いてたのに」

「あー、そんな事もあったっけ。

高校生だったし。そういう年頃だったんだよね。

思春期って怖いよね」

「じゃあ、思春期を抜けた今なら泣かないんだ?」

「……知らない。

もしかしたら、まだ思春期かもしれないし」


あたしが意地っ張りだって事を知ってるハズなのに、なんでこんな事聞くんだろ。


絶対に素直にうなづかないって分かってるくせに。

本当は涙腺が緩いって事も知ってるくせに。


素直にならないで意地をはるあたしを楽しんで眺めてる樹に、負けた気分になってぷいっとそっぽを向く。


そんなあたしを、樹は後ろから抱き締めた。


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