恋に恋した5秒前






「あたし、彼氏いないよ?」


これは、恋さんの証言。



「嘘だ、れんちゃんのクラスの前田に彼氏いるって聞いたよ?」


そしてこちらは、京平さんの証言。



どうやら噛み合っていない。
というか、恋の証言の方が正しい。

京平はなにか聞き間違えただけ。



「…なに、あたしにそんな噂が流れてるの?」

戸惑ったように恋は言った。


「…らしいね。ま、多分京平の聞き間違いだと思うけど。」

ドンと僕は京平の肩を思い切り叩く。


「痛いって!…でも、れんちゃんくらい可愛かったら、彼氏のひとりやふたりいてもおかしくないなあー…って。あ、そういや前に部活で好きな人いるって言ってたよね!!」

京平は必死に聞き出そうとしている。
何がしたいんだよ。

すると京平は僕に向かってめちゃめちゃわざとらしいウインクをしやがった。

僕の為なのか…


「あはは、可愛くなんかないって(笑)。好きな人はー…言えないけど(笑)」

少し顔を赤らめながら答える恋。
好きな人って誰なんだろう。

「えーなんでー」

「秘密だよそれは。secretってやつ」

「えー」


発音のいいsecretは、何だか耳がこそばゆくなった。



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