【禁断の恋】赤い嘘【完】
「でもカッコいいお兄ちゃんがいると何かと大変だね。さっきみたいに……」


「……うん」


茜の言葉に思い出したくなかった光景が蘇る。



――――――………


「あんた星矢の妹だからって調子に乗るんじゃないわよ!」


屋上へ向かう途中、星矢を怒鳴り付けていた女に睨み付けられた。


星矢に振られたからって今度は私に八つ当たり?


「別に調子に乗ってませんけど?」


頭に血の昇った私は挑発的な目を女に向けた。


女の言葉が気に入らなかったわけじゃない。


星矢と関係を持ったという事実が気に入らなかっただけ。


『星矢の妹だからって調子に乗るんじゃないわよ!』

そんなこと言うなら、私と変わってよ?


私は振られたっていい。


星矢に真正面からぶつかっていける貴方が羨ましい。


私はギュッと唇を噛み締め、女の横を通り過ぎた。



その時女が私の後姿を、悪意に満ちた目で睨みつけていたことなど知る由もなく……―――。

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