お家に帰ろう。
その次の日の朝、

「おはよ。」

「なに言ってんの!遅刻するわよぉ。」

「食欲無いからご飯イーもん。」

「ったく。夏になる前にバテるからね!」

「行ってきます。」


明は、小さいパックの野菜ジュースを手に、家を出て行った。



駅に着きホームに立つと、ちょうど電車が入ってきて…
その風圧に軽くむせつつ、
開いたドアから電車に乗り込もうとした、その時。


「うっ!」


車内の熱気にやられ、
さっき、歩きながら飲んだジュースが戻ってきそうになり、
慌ててホームへ降りると、壁際まで走り寄ってしゃがみ込んだ。


そうもしているうち、電車のドアは閉まり、
明をホームに残し走り出す。


明は座り込んだまま、それを見送った。


そこに、

「大丈夫ですか?」

後ろから女性の声が聞こえてきて…

「あ、はい。」

見上げると、それは駅員だった。


「立てますか?あのベンチまで歩けます?」

「あ、大丈夫です。ありがとうございます。」


そして、ふらつきながら立ち上がる明に、寄り添うように手を貸す駅員は、声をひそめ、こう言った。


「違ったらごめんなさいね。つわりではないです?」

「え?…」

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