彼岸花の咲く頃に

姫羅木さんの作り上げた狐火の凄まじさは、俺にも理解できた。

あの大きさ、この離れた距離だというのに、まるで間近でジリジリと肌を熱されているのではないかというほどの温度を感じる。

あの複雑な色彩の炎から考えても、ただの炎ではないのだろう。

「悪狐。お主はこの冬城に、わらわに断り無しで入り込み、あまつさえ千春に傷を負わせた。縄張りを侵害した者への罰、お主も狐ならばわかっておろう？」

「ぬかせ！」

怒号と共に、悪狐は尻尾をうねらせた！

残る五本の尻尾が、再び空気との摩擦で炎を纏う！

今度はそれぞれが分かれ、五方向から姫羅木さんに接近する！

姫羅木さんの尻尾は四本のみ。

迎撃したとしても、どうしても一本は対処しきれない！