彼岸花の咲く頃に
俺を悩ませる件の狐霊はというと、稲荷寿司を食べ終えて満腹になったのか、目を細めて伸びをしていた。

どちらかというと狐というより、縁側で日向ぼっこをしている猫だ。

緩みきった表情。

俺はカップラーメンに値札を貼りつけながら、その善狐様を盗み見る。

多分あの緩みようだと、俺が盗み見ている事すら気づいてはいないだろう。

店の陳列棚にもたれかかって、くあ…と欠伸をしている。

仮定してみる。

百歩譲って、姫羅木さんが本当に化け狐だったとしよう。

だけど、彼女が言うような神様に近い存在の狐霊ではないのかもしれない。

ただ稲荷寿司にありつきたいだけの、悪賢い狐。

俺はまんまと、狐に化かされているだけなのかもしれない。

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