鳴かないツバメ。
ツバメ。
「あの、大丈夫ですか?」
20歳くらいのきれいな女性が地下鉄のホームで泣いていた。

僕はそっとハンカチを差し出した。

何も言えないほど悲しそうに泣いていた。

渡してすぐに階段を上がり、如月商店街を歩いた。

後ろから、ハイヒールのコツコツという音が聞こえてくる。

商店街を抜けてもその音は続いた。そっと振り返るとさっきの女性がいた。

僕が「どうしたんですか」と聞くと、彼女は何も答えずに僕の目をじっと見た。
そして「泊めてください!」と大声で叫んだ。

周りに誰もいなかったが少し恥ずかしかった。

僕は一人暮らしだったのでまぁいいかと思い、「家でよければ」と言ってしまった。

とは言ったものの人を泊めるのは始めてで、どうしたものかと思っているうちにアパートの前に着いてしまった。

「ここです」と言い、階段をのぼる。

僕は知っていたので七段目を抜かした。

「気をつけて!」

「キャッ」ダン!「ピュイピュイ!」驚いた彼女は七段目を思いきり踏んでしまった。それと同時に夕暮れの住宅街に鳴き声が鳴り響いた。

「何!?」

七段目の下にツバメの巣があるんだよ。
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