勉強会:いちご塾・課題作品集
◆第二週・如月 蜜講師

十月度課題『カッコイイ男』

キィィィーーーーーン

うっそうとした森の中、甲高い金属音が闇に響いた。
そのすぐ後、風が走り草木が一瞬、

―――ざわ

と揺れる。


そこには黒い影の姿がぼんやりあった。

息は切れていないが、肩で呼吸をしている。
顔半分程、布におおわれ表情は読めないが、影は若い。
青年の体躯だった。

短い黒髪が露にぬれ月明りの下、漆黒に線を浮び上がらせる。
棒状手裏剣を指間に挟み、一点を見つめていた。

見つめる先には何も無い。
いや、
闇に溶け込んでいるが、たしかに何かいる。

影の腕に、くっと力が入った。
そして…


―――静寂


影と何者かは消え、異様な程の静けさに包まれる。

―――バサバサ

山バトが飛立つ音が響き、すぅと先の影が現れた。

眼の下に、先程まではなかった色の付いた液体が鈍く光る。
腕には逆刃で忍刀を携えていた。

ふいに顔を上げる。
懐から黒い何かを取り出し、開いた。

「………六(ロク)」

しばらくの沈黙の後、

「承知」

閉じて、再度しまう。
刀を捨て、闇に消えた。



後には何者かの骸と、黒く鈍色に光りを放つ、刀が残された。
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