丸腰デパート・イケメン保安課
千太郎くんとブロックで遊んでいた栗田さんも、読者中の家紋さんも、UNOをやっていた昴さんと貢さんも、みんな主任へと視線を向ける。

もちろん、カップを持ったままの私も。


みんなの視線の真ん中で、主任は深呼吸をしてる。

何……どうしたの?

数回、深呼吸を繰り返した主任は、ゆっくりと顔を上げる。

静かにみんなを見回して、明るく笑って言った。


「俺、アメリカに行く!」



…………………。
アメリカ?

「………はい?」

何で?

「旅行?」
「違う、東グループの仕事でアメリカへ行く」

仕事?

「保安課の?」
「違う、俺一人だ」

主任一人で?

「……どのくらい?」
「わからん!数年か、あるいは十年以上かもしれん」

そんなに?!

「いつ?!」
「綾美は質問ばかりだな」
「だって……!!」

いきなりすぎるよっ!

「正月明けくらいには日本を発つ」

「………嘘」


いつもの主任のノリだよね?
作り話だよね?

笑う、主任。
「嘘の様な本当の話だ、綾美。俺はアメリカへ行く。何年になるかわからん」
「………」

嘘。

嘘だよ………。



手に持っていたカップが、床に落ちて激しく割れて散った。
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