心の色
計算された出会い
家出をし、
引きこもりになって早七年、
そして、コウイチにも
それ以来会っていません。
もう会いたくない、
その思いは変わらずも、
タケシが恋をした
カオリの住んでいた
アパートの名義が、
なぜか、父のコウイチに
なっていたとあれば、
カオリの事を何か知っている筈です。
そして、出て行ったカオリに、
もう一度会いたい、
その為なら、コウイチとの
接触も否みませんでした。

朝八時、この時間、
コウイチがまだ仕事に
出る前と言う事を
知っているタケシは、
アパートを訪ねました。

「五年振りか…。」

タケシは、生まれ育ってきた
アパートの前に立つと、
懐かしさのあまり感慨に耽りました。
しかし、AV男優という
経歴を持つ父コウイチに
会うのには、嫌悪感が
溢れる思いでした。
チャイムを鳴らすと、
コウイチが出て来ました。

「タケシ…。」

コウイチは、驚きのあまり
言葉を詰まらせていました。

「ちょっと、聞きたい事があって…。」
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