心の色
克服
 二か月が経ちました。
タケシは以前とは見違える程、
変わっていました。
こずかい程度の収入ですが、
自転車で新聞配達の
アルバイトを始め、
引きこもりを完全に克服し、
毎日のように外を出歩く
ようになりました。
そして、合間をぬっては、
カオリとのデートを楽しみ、
充実した日々を送っていました。
 今日は公園デートです。
カオリが作った弁当を
ベンチで食べながら、
また会話が弾みます。
この日、カオリはずっと
気になっていた事を口に出しました。

「ねえタケシ君、
お父さんの事許してあげたら?」

タケシは、少し表情を曇らせました。

「もうあんな奴と関わり
たくないんだ、
母さんや俺をHIV感染させた奴だ…。」

「でも、感染させようとして、
させた訳じゃないと思うよ。」

「そうだとしても、
AV男優なんてしてるから、
そんな事になるんだ、軽蔑するよ。」

「その事、すごく反省してたし、
後悔してたよ、何よりタケシ君の
事気にかけてた…、
お父さん、悪い人じゃないよ、
それに、緑色のさみしい風が出てる…。」

「もう、
やめよう父さんの話は…。」

タケシは気持ちが沈んでしまい、
この後、いつものように
会話に盛り上がりがなく、
雰囲気が暗いままに、
この日のデートは終わりました。
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