心の色
恋の障害
 この日、タケシに、
ある女性から一本の電話がありました。

「伊藤タケシさんですね、
あなたが交際している、
吉田カオリの母です。
あなたとお話がしたいので、
お会いしたいのですけど。」

なぜ、カオリの母親が?
タケシは疑問に思いつつも、
会わないわけには行きません。
翌日、カオリの母親と
ファミレスで会う事になりました。
 カオリの母から、
この事はカオリには
言わないで欲しいとの事もあり、
そこにカオリは来ていません。

「ごめんなさいね、
突然呼び出しちゃって。」

「いえ。」

カオリの母マリコは、
ほっそりしていて
上品な雰囲気があり、
その為か、タケシは緊張と、
それに加え、なぜか
不安にかられていました。

「担当直入に言わせてもらうわね。」

次に、タケシの不安は
的中する事になりました。

「カオリと別れて欲しいの。
カオリの為に。」

「どうしてですか?」

タケシは、そう
聞きつつも察していました。

「病気の事ですね…。」

マリコはゆっくり
うなずきました。

「カオリさんに聞いたんですか?
俺がHIVに感染してる事。」

「いいえ、あなたの同級生の
お母さんがあの
さゆり苑で働いててね、
カオリとあなたが
仲良くしているのを
教えてくれたのよ、
それであなたが、
その…HIVだって事も…。」

タケシは思い出しました。
さゆり苑を訪ねた時、
最初に玄関先で出迎えた人が、
タケシの高校のクラスメートだった、
シンヤの母親であった事を。
クラスメートにはタケシが
HIV感染者である事は
知られており、
シンヤからその事を
聞かされていたのでしょう。
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