心の色
カオリの目
 どの位、時が経った
のだろうか。
目が覚めたカオリには、
深い深い眠りに
就いていたような、
ダルさがありました。

「私、死ななかったの?」

カオリは、その感覚に、
死んではおらず、
生きている事を
自覚させられました。
 消毒液のような、
その独特の匂いから、
ここは病院のベッドの
上である事は分かりました。
そして、その目には、
包帯らしき物が
巻かれており真っ暗です。

「どうして、こんな物が?」

盲目とはいえ、かすかな
光と人の心の色が
見えるカオリは、
がむしゃらに包帯を
外しました。

「えっ!」

包帯を取ると、カオリの
目の前には、今まで
見た事のない
景色が広がっていました。

「見える…。」

盲目で何も見えなかった
カオリの目には、
ぼんやりとしてはいますが、
確かに、部屋の物や
形が映っているのです。
それは、どこにでもある
普通の病室の中ですが、
カオリにとっては
初めて見る
“部屋の中”
という風景なのです。

「目が治ったの?私…。」
< 39 / 59 >

この作品をシェア

pagetop