秘密の誘惑
そんな会話から始まった食事。


日菜のおいしい手料理にディーンが絶賛する。



「千波は幸せだな こんなに可愛く料理上手な奥さんがいて」


「ディーンも再婚すればいい ホテル暮らしなどやめてね」


――さい・・こん・・・?


萌は箸を持つ手を止めた。



千波とディーンの会話を聞き間違えたのかと思った。



「俺は君のお得意様なのに?」


アメリカでも有数のセレブ一族の一員のディーンはお金に困ることなく、朝倉ホテルのセミスウィートに泊まっている。


去年の春にアメリカから日本の支社長に就任したディーンは忙しすぎて部屋を探す暇もなく、秘書に任せればすぐに見つかるのだろうが、ホテルの方がディーンは気が楽だと利用している。


千波とディーンの会話が進んでしまい萌は聞けなくなった。


ディーンの事を意識していると思われるのも嫌だった。


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