秘密の誘惑

「・・・それは・・・ディーン様は今、萌様にかまわれている暇がないからです」



ニューヨークへ来てからディーンの毎日の平均睡眠時間はわずか2時間ほどしかない。



「何をっ!勝手な事を言うな!」



ディーンはスーツのジャケットを手にすると執務室を出た。



エレベーターに向かいながら携帯電話を操作する。



「萌、部屋にいるのか?出てくれ」



呼び出し音が鳴るばかりで萌は出ない。



ビルを出てタクシーを拾うとホテルへ急がせた。







その頃、萌は薄暗い教会の近辺を彷徨っていた。



周りには家はなく、薄暗い外灯が所々にあるだけだ。



ブルッと萌は振るえ、両腕で身体に巻きつける。



今から30分ほど前、グリーンローン墓地へ到着した萌はリムジンから降りた。



道が混んでいたせいで遅れそうだとタマラに急かされてバッグを忘れてリムジンから降りてしまった。



萌が教会の方を見ているうちにリムジンは走り去ってしまったのだ。



タマラは降りてはいなかった。


すぐに騙された事を悟った。



教会は暗く、辺りに車もなかった。



親族の集まりならば車がないのはおかしい。



萌は泣きたくなった。



いや、実際に涙で頬を濡らしていた。



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