秘密の誘惑
「ディーン、所かまわずキスしないでっ」


カップルがいなくなると萌は花束から顔を上げて文句を言う。



「キスみたいな挨拶程度を恥ずかしがるとは」



文句を言う萌に少々呆れ気味だ。



「だってそんな風に育っていないんですっ」



「そのうち慣れる」



「慣れないっ」



「慣れさせる」



「ディ――」



尖らせた唇が塞がれた。



エレベーターが止まると萌の身体がふんわり浮いた。



「きゃっ!」



とっさにディーンの首に腕を回す。



楽しそうに笑うディーンはこのホテルで一番豪華なスイートルームへと萌を運んだ。


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