【件名:ゴール裏にいます】
【件名:アルビレックス】

東の空が白んで来た。

ステーションワゴンは木曽山脈に沿って伸びる中央自動車道を北に走っていた。
僕は最後の休憩を諏訪のS.A.で取ろうと思っていた。

(諏訪に着く頃には日が昇っているだろうな)

一晩中走り続けて腰が重くなってきた。早く腰を思いっきり伸ばしてやりたかった。





諏訪に着き二人を起こした。

「おはようございます。ちょっと朝食を摂りませんか?」

「私は良いわ。トイレでお化粧直してくるわ」

「じゃあ、あたしもぉ」

「二人共食べないんですか?お昼まで持ちませんよ?」

「大丈夫。あ、牛乳買っといて」

沙希ちゃんは毎朝牛乳を飲まないと調子が出ないそうだ。



女性二人はトイレへ、僕は軽食コーナーへと向かった。
まだ朝早い為に利用者は少ない。
僕はかけうどんをすすりながら、壁に貼ってあった地図を見ていた。

(長野自動車道から上信越自動車道を経て、上越市まで40kmくらいかな?とすると新潟市内までは2時間半くらいだな)

頭の中で時間を計算し、まずは酒蔵会社を訪ねてみようと考えていた。



「牛乳買ってくれた?」

僕が備え付けの灰皿の前で煙草を吸い始めてからすぐに沙希ちゃんがトイレから戻ってきた。

「はい、パックのしか無かったですよ」

牛乳を手渡し、沙希ちゃんの顔を見た。

長時間を狭い車の中で過ごしてきたとは思えないほど沙希ちゃんの顔に疲れは見てとれない。

それにメイクもバッチリ決まっている。

「ありがと」

牛乳を受け取った沙希ちゃんはチューパックにストローを挿してゴクゴクと飲み干した。

「あーっ!もうすぐだねぇ。勇次くん疲れてない?大丈夫?あたし運転代わろうか?」

「お願いできますか?高速道路だし、乗り換えは後一回だけですから大丈夫だと思いますけど」

「うん、大丈夫。勇次くんは後ろで少し横になると良いよ。名山さんにナビゲーター頼んでみる」

「じゃあそうさせて貰いますよ」




そこにメイクを終えたここあさんが戻ってきた。
メイクの決まったここあさんは綺麗だった。
朝日がここあさんを引き立てている。

「名山さんきれー。メイク教えて下さいよぉ」

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