下心と、青春と


「……あ、あれか。アンタ傘ないのか」


「……うん」


「これ貸してやる」


差し出された傘。


「剣之助くんの?」


「おう」


「……いいよ。私走って帰るから」


「ダメだろ」


ほら、と半分押し付けられる形で私は剣之助くんから傘を受け取る。


貴方の優しさが、すごく痛いってこと、剣之助くんに言っても分かってくれないだろうな。


話せば話すほど、好きになっていく。


どうすればいいんだろう。


そう思った瞬間、宇佐見くんに言われたことが思い出された。


まだ、失恋したって決まったわけじゃないもんね。


私は、一つ深呼吸をして、言った。


< 58 / 81 >

この作品をシェア

pagetop