ツギハギの恋
ひなたの乱れた呼吸が髪をくすぐる。

ギュッとされて少し苦しい……。




「……夢を見てたんだ」


「え?」


突然、口を開いたひなたに顔を向けようにも強く抱きしめられて動けない。

ひなたはあたしを離す様子もなく話を続けた。


「夢……。小さな女の子が泣いてて……側に行ってあげなきゃって思うんだけど体が動かないんだ……」



その言葉にあたしの心が重くなる。



「それが凄く苦しくて……。夢の中でその子の名前を叫んでたのに顔も名前も忘れちゃった……」



ああ……

きっとその女の子……



「その子が好きで……ずっとその子を見てた気がする」



あたしだ……。





ひなたはあたしの頭を撫でるとゆっくりあたしの体を引き離した。

あたしは顔を上げられずに唇を噛む。



「……中田さん……泣いてるの?」



黙って首を横に振ると再びひなたの胸に引き戻された。



「泣かないで……。君が泣いてると俺まで悲しくなる」



そう言ってひなたはあたしの頭を両腕で包み込んだ。

苦しい……。


あたしは声を殺してひなたにしがみつくようにして泣いた。


どうしてこんなに苦しいんだろ……。

泣いてばっかで何も出来ない自分に腹がたつ。
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