私が海に還るまで
「……シュウ……?」
年のいった男性の声が聞こえ、シュウの少し先でパシャっと水溜りに浸かる革靴が見えた
「……………父さん……」
シュウの声は落ち着いていて、ただただ低かった
「……御参りに来たんだな」
顔の見えない男性はそう呟いた
「あれは9年前か………お前のアパートを訪ねたんだが不在だった
次に訪ねるともう引き払われた後で……」
傘を持つ手が震え、私は手に力を入れ握りなおした
「母さんの葬式にも行けずにすまなかったな」
シュウは「いや…」と短く返した