【鬼短2.】鬼売り
お桐は慌てました。
出入りの商人だろうか。対応できる者は誰かいないか…。
きょろきょろと 周りを見渡しましたが、相変わらず下女の一人も見当たりません。
仕方なく、網笠姿の商人に、声を掛けました。
「あいすまぬが、まかないの者が今おらぬゆえ、出直してはくれませぬか。」
そう言うと商人は、
「いえ、私が用があるのは、まかないの方ではございません。」
と 首を振るのです。
はて。ならば何の用事だろう。
お桐が首をかしげますと、商人は
「このお屋敷のお嬢様でいらっしゃいますか?」
と お桐に尋ねました。
「ええ。私はここの娘ですが…」
それを聞くと商人、にっこりと笑い、
「私が御用伺いに参りましたのは、貴女様にでございます。」
と、言うのです。