あたしが眠りにつく前に

 ◇◇◇

 ここは無の世界、らしい。

見渡す限り白一色で、何も見えやしないのだから。距離感覚を掴むのは完全に不可能。

いや、色が存在するだけまだ‘無’ではないのかもしれない。

 声や物音は一切聞こえて来ない。つまりは誰も、何もいないのだろう。まさに孤独の境地だ。

 寒くも暑くもなく、大気すらも感じない。まるで透明人間になったかのよう。はたまた幽霊か。

 自分はすでに死んでいる。一見信じ難くてバカバカしく、恐ろしくもある可能性。

それでも冷静にそうなのかもと結論づけかけているとは、頭のネジを5、6本落としてきたに違いない。

 ならば今ここにいるのは魂のみか、それともスカスカとすり抜けてしまう空気のような体もセットか。

それを確かめるため、自身に目を向けようとする、が。

 突然何もないはずの空間から霧が立ち込め、もはや自分の姿すら確認できなくなる。

もがこうとしても、縛られているかのように体が言うことを聞かない。
体が実在しているのは断言できないけれども。










そして……





世界は唯一残していた色すら手放した。




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